ChatGPTやClaudeのような生成AIは、もう特別な道具ではありません。これからの中学生・高校生にとって大切なのは「AIを使えるかどうか」ではなく、「AIとどう付き合うか」です。Ex-Gramの「AI活用講座」は、AI開発企業Anthropicが提唱する“AI Fluency”の考え方をもとに、生成AIを「なんでもやってくれる魔法の箱」ではなく「使い方次第で自分の力を大きく伸ばせる道具」として理解するための講座です。プログラミングコースの一部としてではなく、独立した特別講座として、じっくり時間をかけて学んでいきます。
Ex-Gram「AI活用講座」とは
本講座は、Anthropic「Claude Academy」の「AI Fluency: Framework & Foundations」コースの内容を、Anthropicと教育者(Rick Dakan氏・Joseph Feller氏)が共同開発した“AI Fluency Framework”をもとに、中高生にもわかりやすいよう再構成したオリジナル教材です。既存のプログラミングコース(Ex-Gram初級A/B・中級A/B・上級A〜D)とは別立ての講座として実施しますが、関連する回では対応する単元も紹介するため、プログラミング学習の理解もより深まります。
なぜ今、「AIとの付き合い方」を学ぶのか
生成AIは、使い方次第で「自分の力を伸ばす相棒」にも「考える力を奪う魔法」にもなり得ます。本講座のねらいは、AIに「なんでも聞けばいい」で終わらせず、何を任せ、どう伝え、どう見極め、どう責任を持つか——という判断力そのものを育てることです。無料で使えるclaude.aiを使い、実際にコードを書いてもらう・バグを直してもらうという体験を通じて、AIとの協働のリアルな感覚を養います。
土台になる「4Dフレームワーク」
Anthropicは、AIと上手に付き合うために必要な4つの力の頭文字を取って「4Dフレームワーク」と呼んでいます。本講座は、この4つの視点を軸に組み立てられています。
- Delegation(委任)——何をAIに頼み、何を自分でやるかを決める力
- Description(記述)——AIに伝わるように目的・条件を言葉にする力
- Discernment(見極め)——AIの答えが正しいか・使えるかを見抜く力
- Diligence(誠実さ)——AIを使った結果に自分で責任を持つ力
「これは自分でやるべき?AIに頼んでいい?」「AIが迷わないくらい、ちゃんと説明できてる?」——こうした問いかけを合言葉に、机上の知識ではなく、実際に使いながら4つの力を体で覚えていきます。
1回15分、全48回。ムリなく続けられる学び方
1回15分×全48回(目標)を基本とし、4つのクール(各12回)で構成されています。短時間でテンポよく進むので、他の授業や活動と組み合わせやすく、クラスの理解度に応じて回を調整することも可能です。
対象者・レベル
初級・中級コース(主に中学生を想定)
生成AIに初めてふれるお子さまでも安心して取り組める内容です。「AIは会話ができる」という体験から始め、得意・不得意を知り、4Dフレームワークの入り口にふれたうえで、claude.aiを使った簡単なコーディング体験、そしてバグフィックスの体験へと進んでいきます。
上級コース(主に高校生を想定)
初級・中級で学んだ4Dフレームワークを、より高度な場面(データ分析・複雑なプログラム・AIエージェント的な使い方)で使いこなせるようにする発展コースです。大規模言語モデル(LLM)の内部的なしくみ(トークン化・学習・ハルシネーション・バイアス・セキュリティ)まで踏み込み、Pythonを使ったやや高度なプログラム(統計・データ分析・自然言語処理・API連携)の実践を通じて、大学・社会でも通用するAI協働のスキルを身につけます。なお初級・中級を修了していることが望ましいですが、必須の前提条件ではなく、未修了の生徒がいる場合は最初の数回で復習を行います。
初級・中級コースの内容
クール1:AIって何だろう?〜DelegationとDescriptionの入り口〜
claude.aiで実際に会話をしてみることから講座がスタートします。AIの得意・不得意を比べ、4Dフレームワークという「AIと上手に付き合う4つのコツ」に出会い、「何をAIに任せ、何を自分でやるか」を考えるDelegationと、「AIに伝わるお願いの仕方」を学ぶDescriptionを、身近な具体例とワークを通じて体で覚えていきます。「悪い指示」と「良い指示」を実際に比較する回もあり、指示ひとつでAIの答えが大きく変わることを実感できます。
クール2:見極める力と誠実さ〜DiscernmentとDiligence〜
AIの答えを「そのまま信じない」習慣、教科書や資料と照らし合わせるファクトチェックの方法を学ぶDiscernment。そして、AIが出した結果であっても使う・提出するのは自分であるというDiligenceの考え方を、著作権・個人情報・学校の課題でのルールといった身近なテーマとあわせて学びます。最後には、学んだことをもとに自分専用の「AI利用マイルール」を作成します。
クール3:claude.aiで「作る」〜コーディング入門〜
いよいよclaude.aiを使ったコーディング体験がスタート。「画面に『こんにちは!』と表示されるWebページを作って」という最初の一歩から、自己紹介ページ、くり返し処理で星マークを並べるプログラム、条件分岐を使ったくじびきページ、乱数で動くアニメーション、図形・模様を描くプログラム、物理っぽい動き(落下・跳ね返り)まで、対話を重ねながら少しずつ作品を発展させていきます。クールの締めくくりには、自分だけのミニ作品を企画から完成・発表まで行います。
クール4:claude.aiで「直す」〜バグフィックスと総合演習〜
「バグ」とは何か、エラーメッセージはヒントであるという考え方から出発し、動かないコードをAIに見せて直してもらう体験、直らなかった理由を説明してもらう体験、状況を正確に伝える報告の書き方まで学びます。最終回では、これまでの学びを総合した集大成の作品を企画・制作・発表し、「どこを自分が考え、どこをAIに任せたか」を人に説明できる状態を目指します。
上級コースの内容
クール1:4Dフレームワークの復習と深化
4Dフレームワークを高校生向けの語彙で再定義するところからスタート。AIとの関わり方の3モード(Automation/Augmentation/Agency)を判断基準とともに使い分ける力、「学習効果」「正確性の要求水準」「時間対効果」の3軸でDelegationを判断する力、そして「役割・目的・条件・出力形式」の4要素でプロンプトを構造化する技術など、より実践的なレベルへと深化させていきます。
クール2:LLMの詳しい仕組みと注意点
AI・機械学習・LLMの位置づけの整理から始まり、「トークン」という単位、事前学習とRLHFのしくみ、コンテキストウィンドウの限界、ハルシネーションが起きる技術的な理由、学習データが持つバイアス、プロンプトインジェクションといったセキュリティの基礎、著作権や利用規約まで、LLMの内部構造を体系的に学びます。「なぜAIは自信満々に間違えるのか」を、しくみのレベルから理解できるようになります。
クール3:claude.aiでコーディング実践
Pythonを使った本格的な実践がスタートします。1次関数・2次関数のグラフ描画、シーザー暗号の暗号化・復号プログラム、サイコロ1000回シミュレーションによる大数の法則の確認、ベイズ統計の考え方、CSVデータの集計・可視化、主成分分析(PCA)による多変量データの次元削減、テキストの単語頻度分析、外部WebAPIからのデータ取得まで、大学の情報科学・データサイエンス分野にもつながる実践的なコーディング経験を積みます。
クール4:バグフィックス実践と総合演習
論理エラー・例外処理・型エラーというバグの分類を学び、エラーメッセージ全文をAIに提示して原因分析をしてもらう、複数の修正案を比較検討する、修正後のコードをテストケースで検証する、リファクタリングでコードを整理するなど、実務でも通用するデバッグの考え方を身につけます。最終回では、これまでの集大成となる作品・分析をAIとの協働で完成させ、「大学・社会で通用するAI活用力」を身につけたことを実感する発表会で締めくくります。
この講座を通じて身につく力
初級・中級コース修了時に
生成AIを「魔法」ではなく「使い方次第の道具」として理解し、Delegation・Description・Discernment・Diligenceの4つの視点でAIとの関わり方を自分で判断できるようになります。LLMの基本的な性質を知り、AIの回答を鵜呑みにしない習慣、エラーメッセージを恐れずAIと一緒に直す経験を通じて、プログラミングへの心理的ハードルも大きく下がります。
上級コース修了時に
4Dフレームワークを、単なる合言葉ではなく判断基準・チェックリストとして実際の課題に適用できるようになります。LLMの内部的なしくみを理解した上でAIの限界を踏まえて活用できるようになり、Pythonでの関数・確率統計・データ分析・自然言語処理・WebAPI連携といった大学レベルにもつながる実践経験、そしてAI利用の記録・説明責任・著作権への配慮など、社会に出てからも求められる責任あるAI利用の姿勢が身につきます。
既存コースとのつながり
Ex-Gramプログラミングコースとの接続
本講座は独立した特別講座ですが、クール3のコーディング実践では、Ex-Gramの各テキスト(初級A・初級B・中級A・中級B、上級A・上級B・上級C・上級D)で学ぶ「くり返し処理」「条件分岐」「乱数」「図形描画」「関数」「確率統計」「データ分析」「自然言語処理」といったテーマと対応する回が用意されています。プログラミングコースで学んだ知識を、AIという新しい道具を使ってもう一段深く使いこなす——そんな体験ができるのも、本講座ならではの魅力です。
