電子回路教材の変遷 マイキットオールマイティ、電子ブロックからシングルボードコンピューターのRaspberry Pi、micro:bitまで

サイエンス記事

■はじめに
1960年代から現在に至るまで、実際に使ってみた電子回路教材についてまとめてみました。購入したものだけの紹介ですので、すべてを網羅しているわけではありません。

■マイキットオールマイティから電子ブロックまで
1965年に学研からマイキットが発売されました。小学生の低学年の頃に親に買ってもらった覚えがあります。スプリングの端子にリード線を挟んで配線して電子回路を形成していくもので、部品として太陽電池が搭載されていたのが印象的でした。この太陽電池に触発されて小学生の頃から半導体の専門書を買って勉強をしたものです。
同じく1965年にマイキットオールマイティが発売されます。こちらは、より大きな太陽電池、リレー、CdSセル、クリスタルイヤホンなどがついていました。
1968年にはマイキット150が発売されます。これもよく覚えています。分解癖があって、前に買ったマイキットは既に分解しており、新しく買ってもらったか、自分の小遣いで買ったと思います。木箱入りでした。太陽電池、リレー、CdSセルなどの部品は同じ。ICユニットが目玉でした。ただしICと言っても、今、調べてみると見ると、トランジスタ1石に抵抗、ダイオード、コンデンサーが2㎝角くらいの基板に載ったものでした。
これらのキットでラジオ、ウソ発見器、お風呂の水がたまるとブザーがなる回路、明るくなるとブザーがなる回路などを作ったものです。

1965年には電子ブロック機器製造株式会社から電子ブロックが発売されています。ブロックを抜き差しして回路を作っていくものです。私が使っていたのはクリーム色のブロックの中に電子部品が入っている初期のものでしたが、その後発売されたものは半透明なブロックになっています。
やがて電子ブロック機器製造株式会社は学研と業務提携し、1976年(昭和51年)にはEX-150が発売されます。ところが1980年代はファミコンの登場などにより売り上げが鈍化。1986年に生産打ち切りとなったようです。初代のEX-150は購入しなかったのですが、その後、2002年にEX-150復刻版が出され、これは今でも所有しています。

■Arduino(アルドゥイーノ)
2005年にイタリアで安価で簡便なデジタル制御装置を生産販売するというプロジェクトから生まれたものです。今でも3,240円ほどで買うことができ、ファンも多いようです。ArduinoはワンボードマイコンでプログラミングにはArduino IDEと呼ばれる統合開発環境を使います。Processingと似たような画面です。ブレッドボードにLEDを配線して、プログラムから光らせたり、より複雑なことも簡単にできます。AR(拡張現実)と組み合わせて、PC画面上のLEDをクリックすると、実際のLEDが点灯するといった遊びをしていました。Arduinoに電源を確保すればPC無しで動かせます。書籍も多く出ていて、大人にも使われています。

■littleBits(リトルビッツ)
2011年発売のlittlebitsはマグネットでブロックを繋ぐことにより、ハンダ付けや配線などをいっさいすることなく電子工作ができます。ただし、ちょっと高価で、例えばデラックスキットは58,999円ほどしました。 Arduinoのブロックもあり(23,500円もしましたが海外では64.99ドルのようです)、プログラミングができます。下の写真は乱数サイコロ2個のプログラムを書き込んで動作させたところです。
また、Cloudビットと呼ばれるブロックを買えば(11,980円ですが)、無線LAN接続ができ、IoTの実験が簡単にできます。例えば下の動画は、iPadに表示されたボタンをクリックすることにより、インターネットを通じて、遠隔にあるサーボモーターを動かし、チューブ状のライトを光らせるデモです。地球の裏側にあるサーボモーターを手元のiPadで操作するといったことが簡単にできるということです。このようにラピッドプロトタイピングに適しています。モーター類、センサー類のいろいろなブロックがあります。

■Raspberry Pi(ラズベリーパイ)
人気のRaspberry Piは5,130円ほどで購入できます。2012年に発売されたはラズベリーパイはARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピューターです。モニターとキーボード、マウスがあれば、Raspberry Piに接続するだけで開発ができます。通常はRaspbianOSをインストールして使用しますが、他のOSのインストールも可能です。数式処理ソフトであるMathematicaが無償提供されているのもありがたいことです。サーバーとして使うこともできます。関連する書籍も数多くあり、大人にも人気です。

■Ozobot(オゾボット)
小型ロボットのオゾボットは9,800円程度で購入できます。2014年にラスベガスのCES展示会でお披露目されたOzobotはカラーを識別し、そのパターンに応じてライントレースするロボットです。コースとなるカラーのラインは自分で作成することもできます。小学生の低学年向きのように思います。

■micro:bit(マイクロビット)
micro:bitはARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピューターで2,160円ほどで買うことができます。25個の赤色LEDと、加速度センサーと磁気センサーを内蔵しています。温度を測ることもできます。BBCが開発し、2016年に英国の7年生の子どもたち(11歳から12歳)約100万人の小学生全員に無料で配布されたことは有名です。2017年8月に日本上陸したようです。開発環境はウェブブラウザ上で動作するブロック言語で、JavaScriptモードにワンクリックで移行できます。さらにPythonでのプログラミングも可能となっています。下の写真は超音波距離センサーを接続した例で、10㎝より近いとハートが表示され、遠いと×印が表示されるようにプログラミングしてあります。電源を確保すればPC無しで動かせます。小中学生の教育用として良くできていると思いますが、無料配布した100万台のmicro:bitがその後、どう活用されているのか気になるところです。

■IchigoJam(イチゴジャム)
こちらは実際に使ったことはありませんが、2014年に初登場しています。テレビとキーボードをつなげば、すぐにプログラミングを始められるとのことです。初心者向けのプログラミング言語BASICを使っています。組立て済完成品で2,160円ほどの価格です。

■まとめ
このようにかつてない低コストでシングルボードコンピューターが手に入る時代になりました。センサー類も安く入手できます。そのため、STEAM教育用に使えるのはもちろんですが、例えば複数台のシングルボードコンピューターを組み合わせて今までになかったような新しいシステムを作るというようなことも比較的手軽になってきたわけです。従来は高価でとても手が届かなかったことがアイデア次第で実現可能な時代になりました。あとはそのアイデアをどう出すかということでしょう。